砥部衝上断層
砥部衝上断層は、中央構造線上の逆断層です。日本列島の構造発達史を知る上で重要であるため、昭和13年に国の天然記念物に指定されました。
指定地域
(右岸)砥部町岩谷口450番地先より下流同番地に至る間
(左岸)砥部町大南1891番地先より下流同1869番地先に至る間

1 砥部衝上断層と中央構造線
日本列島は、新潟県糸魚川と静岡とを結ぶ糸魚川ー静岡構造線(フォッサマグナの西縁)(次図E)で東北日本と西南日本とに分けられます。
さらに、西南日本は中央構造線(次図C)によって二分され、北側を内帯、南側を外帯と呼んでいます。
長さ900キロメートルもある日本最大の中央構造線は、5回活動をしてきたといわれています。その内の2、3、4回目の活動の証拠は、愛媛県内にある露頭の事実からわかったものといわれています。
その内のひとつが砥部衝上断層で、3回目の活動の根拠を示す重要な場所となっています。
日本列島の地体構造図
日本列島の地体構造図(Taira et al.,1989)
1:飛騨変成帯,2:三郡変成帯,2’:上越変成帯,3:山口帯,4:舞鶴帯,4’:上越帯の先白亜系陸棚相,5:丹波-美濃帯,5’:足尾帯,6:北部北上帯,6’:ジュラ紀付加コンプレックス,6’:ジュラ紀付加コンプレックスのナップ,7:領家変成帯,8:三波川変成帯,8’:西彼杵帯,9:秩父帯,10:三宝山帯,11:四万十帯,12:阿武隈帯,13:南部北上帯,14:神居古潭変成帯,15:幌加内オフィオライト,16:蝦夷層群,17:日高帯,18:湧別帯,19:日高帯,20:常呂帯,21:根室帯,22:伊豆-小笠原島弧とその付加体,A:飛騨外縁帯,B:長門構造帯,C:中央構造線,D:黒瀬川構造帯,E:糸魚川ー静岡構造線,F:棚倉構造線,G:双葉構造線,H:早池峰構造線
2 地質の概説
断層が観察できるのは、砥部川の河床に数メートルの段差があり、水が滝のように流れ落ちているところです。
中央構造線を境にして、北側(断層より下流側)には白亜紀後期(約8000万年前)の和泉層群が、南側(断層より上流側)には新第三紀中新世(1800~1500万年前)の久万層群明神層や白亜紀以前と考えられる三波川変成岩が分布しています。
また、断層に沿って、褐色のドロマイト質片岩(高木ほか、1992)が見られます。
3 断層の露頭と地質構造
砥部川が滝のように流れ落ちているすぐ上に、円形の穴が見られます。これは、おう穴またはかめ穴と呼ばれるもので、川の流れにより川底がえぐりとられてできたものです。
断層は、この滝の右岸と左岸に見られます。
砥部衝上断層全景写真(北側から撮影)
拡大写真
砥部衝上断層の露頭図(T.T.:砥部衝上断層)
高木ほか 1992,p1069第1図b(岡田,1972を簡略化)
断層の証拠として、破砕岩、断層面が見られることがあげられます。
また、断層の種類には、主に正断層と逆断層と呼ばれるものがあります。正断層は、断層面を境にして上盤の方が下へ下がっている場合で、逆断層は上盤が上がったものをいいます。
砥部川の露頭では、断層面を境にして上盤というのが川下の和泉層群です。
逆断層のうち、断層の角度が45°よりも水平に近いものを衝上断層と呼んでいます。

4 断層付近に見られる岩石
砂岩・頁岩(和泉層群)
和泉層群は海底に堆積した砂や泥が固まってできた岩石です。砂が固まった部分が砂岩、泥が固まった部分が頁(けつ)岩になっていて、砂岩と頁岩がいろいろな厚さで交互に重なっています。
断層の近くでは、断層活動で破砕された破片状の砂岩や頁岩が確認できます。
ドロマイト質片岩(三波川変成岩)
断層沿いに見られる褐色の岩石は、発見当初はマグマが貫入してできた火山岩と考えられていました。その後の岩石の分析結果に基づいて、現在では三波川変成岩が断層活動による破砕や熱水変質を受けて作られたドロマイト質片岩とされ、その一部が断層沿いに分布していると考えられています。
礫岩(久万層群)
久万層群明神層は陸上に堆積した砂礫(されき)が固まってできた岩石で、現在の河川にあるような円礫を多く含んでいます。礫の大きさは直径数センチメートル~10数センチメートルが多く、礫の種類は砂岩が卓越します。
この砂岩礫は和泉層群から供給されたと考えられています。
断層の近くでも礫岩が破砕されている様子はないため、断層活動の影響は和泉層群よりも弱いと考えられます。
結晶片岩(三波川変成岩類)
砥部衝上断層よりも約200メートル上流側では三波川変成岩が見られます。
ここでみられる変成岩は、結晶片岩という縞模様のある岩石です。
緑色の岩石は苦鉄質片岩、灰色から黒色の岩石は泥質片岩で、変成作用を受ける前の元の岩石の種類によって区分されています。
この結晶片岩を久万層群が覆っています。
参考資料
- 岡田篤正,1972,四国北西部における中央構造線の第四紀断層運動.愛知県立大文学論集,23,68-94.
- 高木秀雄・竹下徹・柴田賢・内海茂・井上良.四国西部,砥部衝上断層における中新世中期の正断層運動.地質学雑誌,1992,vol.98,no.11,p1069-72.
- 岡田篤正,堤浩之,中田高,後藤秀昭,丹羽俊二,1998b,1:25,000都市圏活断層図
- 「郡中」,国土地理院技術資料D-1-355.
- 後藤秀昭,丹羽俊二,中田高,岡田篤正,堤浩之,1998,1:25,000都市圏活断層図
- 「松山」,国土地理院技術資料D-1-355.
- 中田高,後藤秀昭,岡田篤正,堤浩之,丹羽俊二,1998,1:25,000都市圏活断層図
- 「西条」,国土地理院技術資料D-1-355.
- 日本地質学会編.日本地方地質誌7「四国地方」,2016
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更新日:2026年03月27日